Bリーグ好き勝手

Bリーグ(国内バスケットボール)の主にB1を中心に、スタッツを考察したりしなかったり

Bリーグのコロナ対応に思うこと

 

ネガティブ寄りの内容です。

壊れてしまったシーズンから少しでも未来へつながる材料を拾い集めたい、と思い記述します。

 

 

目次 

 

 

 

Bリーグ 2019-20 シーズンはご存知の通り、新型コロナウィルスの影響で途中中断・終了となりました。

新型コロナウィルスと言う激動の中で揺らいだシーズンでしたが、新シーズンの開幕にあたって、今一度リーグの取った対応を検証してみたいと思います。

 

ニュースから見る対応の変遷 

まず、ニュースの変遷を追うことで、その重要度と対策がどのように変わっていったかを見てみたいと思います。*1

2019.12.21 富山グラウジーズ インフルエンザなどの流行を受けハイタッチ・握手自粛
2020.2.21 有観客開催前提で新型コロナウイルス感染症への感染対策・予防方針の案内
2020.2.26 B.LEAGUE 2019-20 B1リーグ戦開催延期を決定(2/28~3/11 分)
* 3/12 代替試合を決定(2/28~3/11 → 4/15~5/4)
* 3/27 中止が決定
2020.3.10 B.LEAGUE 2019-20シーズン ポストシーズンフォーマット変更 CS を1戦先勝方式に変更
* 3/27 中止が決定
2020.3.11 B.LEAGUE 2019-20シーズン B1リーグ戦 無観客開催を決定(3/14~4/1 分)
* 3/17 開催中止が決定(3/20~4/1 分)
  選手会監事、会長、副会長でオンラインの会議*2

2020.3.12 NBAが中断を発表(現地時間 3/11)
2020.3.14 川崎ブレイブサンダースレバンガ北海道 戦が中止
  滋賀レイクスターズアルバルク東京戦 滋賀の外国籍選手3人が健康上の不安を理由に欠場することをチームが了承(15日も同じく欠場)
  選手会が主導し、選手内で LINE アンケートを実施
2020.3.15 千葉ジェッツ 対 宇都宮ブレックス 戦が中止
2020.3.16 選手会とリーグでミーティング
2020.3.17 B.LEAGUE 2019-20シーズン B1リーグ戦 開催中止が決定(3/20~4/1 分)
2020.3.21 Bリーグ中断に対して日本バスケットボール選手会 田口会長がコメントを発表*3

2020.3.25 選手会とリーグでミーティング
2020.3.27 B.LEAGUE 2019-20シーズン 全試合中止およびシーズン終了を決定
2020.4.2 大阪エヴェッサ 新型コロナウイルス感染症 陽性判定
* 4/13 PCR 検査の陽性反応者が累積13名(選手11名、チーム関係者2名)となったことを報告
* 4/23 最初に発見された 5 名の陽性者について、食事会での感染とは断定できないと報告*4

* 4/27 全員が自宅療養を解除
2020.7.8 川崎ブレイブサンダース アメリカで個人練習中の選手1名(氏名公表) 新型コロナウイルス感染症 PCR 検査の陽性反応を報告
*7/13 PCR 検査結果陰性を報告
2020.7.14 オンラインで理事会を開催
選手、スタッフ、審判員ら約880名を対象に PCR 検査を実施するなどの対策を発表*5

2020.7.21 リーグから各クラブへ特別支援金の配分を発表 計7億6千万
2020.7.23 名古屋ダイヤモンドドルフィンズ 新型コロナウイルス感染症 PCR 検査の陽性反応者1名を報告
* 7/24 別の陽性反応者1名を報告
* 7/31 濃厚接触の有無に関わらず、選手、スタッフなど計37名に PCR 検査を実施 全員の検査結果陰性を報告
2020.7.24 バンビシャス奈良 新型コロナウイルス感染症 PCR 検査の陽性反応者1名を報告
2020.8.14 アルバルク東京 新型コロナウイルス感染症 PCR 検査の陽性反応者3名(氏名公表)を報告
* 8.18 陽性反応者、濃厚接触者全員が PCR 検査結果陰性を報告
2020.8.18 熊本ヴォルターズ 新型コロナウイルス感染症 PCR 検査の陽性反応者3名と濃厚接触者15名を報告
2020.8.19 JBA 第96回天皇杯と第87回皇后杯の大会フォーマット変更を発表

 

2019 年中はまだインフルエンザの影響のみが考慮されており、富山グラウジーズでは12/21 より通年通り接触が禁止されています(その直前に山田選手がインフルエンザに罹患したため)。2/21 にリーグから感染対策案が出されますが、この時点でも観客を入れての開催が前提にありました。

しかし事態が急変し、その 5 日後にはリーグ戦の延期(後に中止)が発表されます。その後、3/11 に以後の試合を無観客試合で再開することにしましたが 2020/3/14, 15 の試合にて選手や審判の発熱に対して判断が難航、3/11 には NBA の中断が発表されていたことから B リーグの対応に不満を示す選手も現れ、開催はこの 2 試合までとなり残念ながらシーズン途中での終了となりました。

 

B リーグの対応に対する感想

世間ではここでの一連の対応を評価する向きはありますが、個人的には看破ならない部分があります。特に 2/26 ~ 3/11 までの中断期間という空白期間がありながら、判断は「理事会」「実行委員会」「幹部会」*6といった経営者サイドの意向のみが集約され、最も優先されるべき選手の意見を反映しないまま「シーズン再開」という判断をしたことは大失態でしょう。

 

news.yahoo.co.jp

Bリーグの大河正明チェアマンはシーズンを再開する理由として、5月に決勝を行うという日程の中でこれ以上延期して試合を入れ込むことが不可能であることを説明している。それは結果的に選手の心情や健康面が考慮されず、リーグの都合が優先されていたように思われる。

 

いつ再開されるのか不透明な状況の中、感染に対する不安と戦いながら、いきなり試合を再開することを告げられた選手たち。しかしその対策の妥当性も周知されず、実際に選手に発熱があっても試合開催を強行しようとする姿勢に不信感を持つのは当然です。

試合開催後に主に外国籍選手を中心に不満の声が顕在化し始め、そこでようやく選手会と対話を実施。しかし納得できない一部の選手はチームと合意の上で契約を解除し帰国する事態に発展しました。更に、この時点でシーズンの選手登録期限を超えていたため、退団されたチーム側は新規外国籍選手を登録できず、平等な試合開催は実質的に不可能となっていました。

 

未来の B リーグについて考える

シーズン終了は当然、爆発的な感染 - パンデミック を防ぐためであることは間違いないことではあるのですが、副次的な要因として「選手のマネージメントを十分にできなかった」という組織的な課題であることも忘れてはいけません。

 

number.bunshun.jp

「(それまで)我々が向き合っていたのは各クラブの実行委員でした。もちろん、実行委員の方々は現場のことを把握し、意識されたうえで意見をおっしゃっていただいていたと思います。ただ、経営者として1つの会社を背負い、維持していかなければならない責任も強く、そこで現場とのギャップが生まれていたのかなとも思います。 

 無観客試合後には選手ともコミュニケーションを行ったのですが、我々が認識していた以上に、彼らは感染リスクを懸念し、不安を抱えていました。それらを総合的に判断した結果、コロナ禍の状況下でバスケを続けるのは困難なのではないかと痛感したのです」 

 

次のパンデミックが何十年後何百年後に再来するかは分かりませんが、本質は感染症にいつ襲われるかではありません。「選手ファーストではない思考」「選手会が選手としての権利を正しく主張できない」「そもそも選手の権利とは何かを理解していない」といった共通の課題があります。新型コロナによって得られた教訓が「財政的な課題」にのみ集約されたならば、これらの課題は別の形となって問題を引き起こすであろうと推察できます。

脆弱な財政基盤しか持たない組織とはいえ、むしろだからこそ、「ステークホルダーは誰か、その権利は何か」「異常事態にそれぞれがどのような責務を果たすべきか」といった理念は共通化して持っているべきと考えます。

 

島田 新チェアマンに期待するもの

シーズン終了後、体制について一つの大きな変更がありました。7/1 に B リーグチェアマンとして島田氏が就任したことです。

ここでニュース一覧を再度振り返っていただきたいのですが、7/1 以前と以後において B リーグの打ち出した具体的な方策の数がはっきりと違うことが見て取れると思います。4/2 に初の感染者が出て、4/24 には収益減と資金繰りの悪化を発表*7とその影響を直に感じていたはずのリーグなのに、実際の対応策は約3ヶ月遅滞しました。もしかすると「この間に対応策を講じていた」「新しいチェアマンを選出することを優先した」ということがあるかもしれませんが、いずれにしてもこの期間は「過去(起きている危機)を発表する」ばかりで、対策のスピードの遅さ・アジリティの低さを感じずにはいられませんでした。

比較して、島田氏就任後は確実に「未来(対策内容)を発表する」方向に向いています。7/13 に開幕日を発表した直後の 7/14 に感染防止対策、7/21 に(第1弾?)チーム支援を矢継ぎ早に発表し「開幕に必要なことは実行に移す」というメッセージを送り込んでいます。正直なところ、いろいろと揶揄されることの多い氏ですが、このスピード感と問題解決の指向性を見る限り、信じるに足る人選だったと私は思っています。

当面はまず新型コロナ対応(感染防止策/感染時対応)、コロナ禍での収益の健全化にリソースが取られると思います。ですが終息の希望が見えてきた頃には、選手の地位向上や権利の獲得についてのプロジェクトチームを発足するような動きがあってもいいのではないでしょうか。「令和を象徴するバスケ」を目指すのであれば、いつまでも平成や昭和の体質を引きづる "雇われ職業プロ" は過去のものとしなければならない時が来ます。

 

史上最大の危機に果敢に立ち向かう、勇気ある集団を讃える意味を込めて。

 

*1:主となる記事を富山グラウジーズのニュースから取得し、後からリーグの記事などを追加しています。

*2:

sports.yahoo.co.jp

*3:

j-bpa.com

*4:

www.evessa.com

*5:

basketballking.jp

*6:

number.bunshun.jp

*7:

www.nikkei.com