Bリーグ好き勝手

Bリーグ(国内バスケットボール)の主にB1を中心に、スタッツを考察したりしなかったり

バイウィーク企画(5):各チームの特色を探る

 

レギュラーシーズンの試合がないバイウィーク。

 

...から数日。

量が多すぎて紹介しきれなかった数字も少しずつ公開していきたいと思います。

 

今回は各チームのカラーの考察!

 

 

目次

 

はじめに

前回の企画に引き続き、全チームを対象にどんな特色があるのかを探ってみたいと思います。

 

まずはシュート、被シュートの傾向です。

 

表の説明

まず最初に表の項目の説明です。

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「全試投数」... FG アテンプト総数。2PA+3PA。

「2P選択率」... FG のうち 2P を打った確率。逆数が 3P選択率。横の数値は全チーム中の順位。

「2P%_M」... 2 ポイントシュートの成功率の試合平均。(≠ 総2PM/総2PA)

「全得点」... フリースローを含めた総得点。

「2P による得点」... 2PM による総得点。

「2P/得点率」... 全得点のうち 2PM による割合。

基本的に勝利数順にソートしています。 

 

自チームシュート傾向

2ポイントシュート

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感覚的に言うと、決定率-選択率-得点率が相関するのは悪くありません。決定率が悪いショットよりも良いショットを選択する、結果そのセレクションでの得点が上がるのは自然な流れだからです。

千葉と富山は似通った性質を持っていて、2P 決定率が高いのですがそこを強調する拘りは特にないらしく選択率/得点率ともに平均的。3Pもほどよく混ぜるバランス攻撃型チームと言えます。

特徴的なところでは大阪と信州が非常に対照的で、片や大阪は2Pを多く選択し2Pによる得点を主体としているのに対し、片や信州は2P%がそれほど悪くないながらも選択率が唯一50%を切り(= 3P試投数の方が多い)得点も 850 点と極めて少ない。これは勝久マイケルHCの戦略でしょう。

大阪タイプなのが島根。得点の6割を2Pで稼いでおり選択率も高め。

気になるのが三遠。決定率が全チームで最も悪いのですが 2P の選択率は2番目と、ややちぐはぐな印象を受けます。

 

3ポイントシュート

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続いて 3P を見ていきましょう。

やはり最も特徴的なのが信州でしょうか。選択率52%、得点2位、得点率1位。ただし決定率は 13 位です。つまりそれほど決まっていないけれども打ち続けることを徹底しています。この信州タイプなのが実は滋賀。信州ほど極端ではないにせよ 2P も同じような傾向が出ています。

先ほど 2P で対照的だった大阪は決定率 5 位と 3P の確率がよいので、得点率では言うほど悪くはありません。もう少し 3P を打ってもいいのじゃないかなと思うほど。

得点で信州を凌駕したのは決定率が驚異の 40% 越えの三河。こんなに効率よく決められては守備側としては「どうやって守るの?」と弱音が聞こえてきそうな、最も怖い攻撃陣です。

ギャップが大きいのは A東京。3P がかなり優秀なんですが選択率が低い。ルカHCの拘り的なところも垣間見えそうな気がするのは私だけでしょうか。

  

シュート別得点期待値と 3P 選択率

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左側に現在のシュート成功率に得点をかけた単純な得点期待値をプロット、右側に縦軸が同じで横軸に 3P 選択率を取った散布図を用意しました。

三遠、秋田は 2P/3P どちらも VOP(1ポゼッションあたりの得点期待値 ≒ 1)を下回るため、1回の攻撃の質という意味では弱みを感じているはずです。

2P よりも 3P の期待値が高いのは三河/名古屋/A東京/宇都宮/北海道。先ほども書いた通り、A東京はその高い期待値とセレクションのギャップがあるように感じます。意外と 3P 期待値の高いのが富山。これだけ高い期待値ならば選択率を上げたいところ。

そして注目いただきたいのは信州の場所。2P の期待値は 1 を超えますが、3P は 1 を割り込みます。期待値と選択率に明らかな開きがあり、ちょっと難しいかなと思いながらも意識的にセレクションしていることが分かります。3Pの期待値と選択率がともに高いのは名古屋Dが優秀と言えるでしょうか。

 

ここまでシュート傾向を見てきましたが、信州は敢えて期待値の低い 3P を打ち続けているわけなので自然と総得点は下がっていきます。それでは試合に勝てないので、守備の方にも何か仕掛けがないかを見ていきましょう。

 

相手チームシュート傾向

2ポイントシュート

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同様に対戦相手のスタッツを出してみました。 2P を攻めさせずによく守ったのが横浜/島根/千葉。突かれてしまった形なのが A東京/新潟と言えるかと思います。

2P 守備面におけるアプローチは 2 通りあり、1. 2P 成功率を下げた上で相手に 2P を選択させる(宇都宮/琉球/A東京/名古屋D/信州)パターンと、2. 3P をケアすることを前提に  2P を選択させない(北海道)パターンです。

1 のパターンのチーム名を見ると完全に守備型チームと一致しますね。(A東京はそのままインサイドを突かれてしまってますが...)

 

つまり守備型チームとは、Bリーグで多数派の 2 ポイントシュート多投型チームに対して守備をすることを意識しています。そして信州の 3 ポイントシュート多投型スタイルは守備型チームへのカウンターとして実行していると思われます。

幾ら期待値が高いとはいえ 2 ポイントシュートに対して守備をしてくるチームに 2 ポイントで攻め込んでいたらかなり分が悪い。そこで敢えて期待値の低い 3 ポイントを多投することで相手の守備に対応させない道を選んでいるのではないでしょうか。

 

 

3 ポイントシュート

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続いて 3P を見てみましょう。

先ほど守備型チームとして名前を出した Pt.1 宇都宮/琉球/A東京/名古屋D/信州 のうち宇都宮/琉球/信州 は 2P/3P ともに隙が無い守備のチームと分かります。A東京も 3P に関して言えばリーグ 1 の守備率です。

Pt.2 北海道は 3P を選択させていますが失点は言うほど悪くありません。3P の成功率は1/3 以下だと得点効率上リターンが低くなりますがどうしてもどのクラブも浮き沈みがあるからで、宮永HCがやりたいバスケットボールは「相手から確実性を奪う守備」を指向しているように見えます。なかなか勝利という結果はついてきませんが、インサイドバスケのカウンターである信州バスケの、更にカウンターを取るような戦術と言えるでしょう。この方法を取っているのが横浜と千葉。

こうして見ると、守備面で横浜と北海道はよく守れていると評価できそうですね。

 

まとめ 

得失点期待値

最後に得失点期待値を見ていきましょう。

 

ここでは VOP(Value Of Possession = 1ポゼッションあたりの得点)の平均値を見ていきます。自チームの平均 VOP を攻撃 VOP、対戦相手の平均 VOP を守備 VOP とすると、

チーム 攻撃VOP 守備VOP
宇都宮 1.13 1.00
千葉 1.19 1.05
三河 1.19 1.09
SR渋谷 1.12 1.08
琉球 1.11 1.04
富山 1.17 1.07
秋田 1.06 0.99
川崎 1.11 1.06
A東京 1.14 1.06
名古屋D 1.10 1.05
大阪 1.08 1.08
信州 0.99 1.04
滋賀 1.07 1.14
島根 1.02 1.14
横浜 1.03 1.08
新潟 1.04 1.15
北海道 1.06 1.14
京都 1.08 1.16
三遠 1.00 1.14
広島 1.02 1.17

このようになります。

 VOP の平均値は 1.0857、標準偏差は攻撃時 0.05856、守備時 0.05093 でした。

 

横軸に攻撃期待値(自チーム VOP = 1 回の攻撃で何点取るか)の B1 内偏差値、縦軸に守備期待値(相手チーム VOP = 1回の守備で何点に抑えるか)の B1 偏差値を取ったプロットが以下の図です。

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偏差値なので平均は 50 となります。

図がちょうど各チームの印象と重なったので、それぞれ 50 より大きいかどうかを参考に "攻撃型"、"守備型"、"バランス型" と割り振りました。

 

こう見ると、攻撃/守備ともに偏差値55を超えている2チーム…宇都宮と千葉の優秀さが抜きん出ている印象。次いでその領域に最も近いのが A東京、川崎。

結論として、安定した強さとは攻撃の突出ではないことが窺えます。(三河が少し攻撃側に振れていますが)ざっくりおおよそ「攻撃型」と単純に呼べるチームは存在せず、上位がバランス型、中位が守備型、下位がそれ以外というのが今のトレンドと言ってよいでしょう。

 

ポゼッション

もう一方で、バスケットボールは「相手より多く点を取ったチームが勝利するゲーム」という側面があります。

 

VOP が 1 ポゼッションあたりの得点であることから、チームが勝利するためには、

(自チーム VOP)x(自ポゼッション) > (相手チーム VOP)x(相手ポゼッション) 

であれば良いので、 

  1. VOPを相手より高める
  2. ポゼッションを相手より多く獲得する

の2つの方法があります。

相手より VOP が悪くてもポゼッションが多ければ(例:強度の高い守備をして相手バイオレーションを多く引き出す)勝つチャンスが高くなります。

 

ポゼッション回数は以下の通り。

チーム POS 相手POS POS差異  
宇都宮 71.74 71.49 0.25 6
千葉 74.34 74.77 -0.43 19
三河 71.83 71.73 0.10 8
SR渋谷 75.50 74.86 0.64 1
琉球 72.02 71.75 0.27 5
富山 76.57 76.98 -0.41 18
秋田 75.06 74.74 0.33 3
川崎 73.64 73.92 -0.28 16
A東京 71.19 70.87 0.33 3
名古屋D 71.99 72.56 -0.57 20
大阪 75.73 75.43 0.31 4
信州 69.94 69.97 -0.03 11
滋賀 71.72 72.05 -0.33 17
島根 72.78 72.76 0.02 10
横浜 70.28 70.37 -0.09 13
新潟 74.33 74.24 0.09 9
北海道 72.34 72.18 0.16 7
京都 73.14 73.33 -0.19 15
三遠 73.90 74.03 -0.12 14
広島 74.66 74.69 -0.03 12

先程の偏差値プロットで "守備型" に位置していたチームが、ポゼッション差異上位に位置づけられてます。特徴的なのはトップの SR渋谷で、VOP ではどちらかと言えば攻撃的なスタイルでしたがポゼッション差は如実に現れています。

 

また、先ほどの VOP に差異を付け加えた表がこちら。

チーム 攻撃VOP 守備VOP 攻撃-守備  
宇都宮 1.13 1.00 0.127 2
千葉 1.19 1.05 0.144 1
三河 1.19 1.09 0.099 3
SR渋谷 1.12 1.08 0.042 10
琉球 1.11 1.04 0.071 6
富山 1.17 1.07 0.099 4
秋田 1.06 0.99 0.066 7
川崎 1.11 1.06 0.057 8
A東京 1.14 1.06 0.081 5
名古屋D 1.10 1.05 0.050 9
大阪 1.08 1.08 -0.007 11
信州 0.99 1.04 -0.051 13
滋賀 1.07 1.14 -0.063 14
島根 1.02 1.14 -0.113 17
横浜 1.03 1.08 -0.047 12
新潟 1.04 1.15 -0.117 18
北海道 1.06 1.14 -0.072 15
京都 1.08 1.16 -0.081 16
三遠 1.00 1.14 -0.138 19
広島 1.02 1.17 -0.147 20

 

上記の2表から導出される1試合の平均得点差は以下の通りです。

チーム VOP 差異  
宇都宮 9.37 2
千葉 10.27 1
三河 7.23 3
SR渋谷 3.87 9
琉球 5.37 6
富山 7.13 4
秋田 5.30 7
川崎 3.87 9
A東京 6.13 5
名古屋D 3.03 10
大阪 -0.23 11
信州 -3.60 13
滋賀 -4.90 14
島根 -8.23 17
横浜 -3.43 12
新潟 -8.63 18
北海道 -5.00 15
京都 -6.13 16
三遠 -10.37 19
広島 -11.03 20

各チームのアプローチは違えど、特色を出しながら試合を戦っていることが見て取れるかと思います。